今回は1996年公開の映画「クラッシュ」という作品のエロ表現について考察していきたいと思います。
いつも結末などのネタバレはしないように気を付けているつもりですが、今回はどうしてもそれらに触れる部分があります。
一応、結末と後半の重要な展開について解説する際は<ネタバレ注意>の文言を出しておきますので、映画未見の方はご注意ください。
映画「クラッシュ」(1996)とは?
今回取り上げる映画「クラッシュ」は鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の作品です。
※2004年公開の映画にも同名のものがありますが、そちらではありません。
次々と描かれる性描写と、扱っている性癖がタブー感のあるテーマだったため、カンヌ国際映画祭ではブーイングまで起こったそうです。
その扱っているテーマというのが<交通事故・自動車事故に性的興奮を覚える>という危ない性癖であり、後述しますが人体損壊フェチにもつながるものなのです。
だいぶ攻めた内容ですが、ブーイングが起こるというのは、むしろこの映画が素晴らしいという証拠でもあります。
何故ならば人間は性の本質には蓋をしたがる習性があるからです。
つまり、この映画が性の本質をあまりに生々しく描いてしまったがために、真実から目をそむけたくなる人間が出てきてしまったという事なのです。
交通事故で目覚める自動車事故フェチズム
性癖というものは生まれ持って決まっているものではなく、後天的に身につくものです。
特に幼少期の体験などが大きく影響を及ぼすと考えますが、大人になってからの体験が新たな性癖を生む事もあります。
これは多かれ少なかれ、皆が経験している事でしょう。
例えば初体験をした人は、その時の相手やプレイがその後のセックスの趣向に影響を及ぼしたりします。
ただ、この映画ではもっと強烈な性の目覚めが描かれています。
それが交通事故による交通事故・自動車事故フェチへの目覚めです。
正面衝突事故と衝撃のおっぱい見せシーン
映画の最初のほうでそれは描かれます。
主人公のジェームズ・バラードは、ある時よそ見運転でハイウェイを逆走。
必死に対向車を避けようとするジェームズですが、遂に1台の車と正面衝突を起こしてしまいます。
衝突相手は男女一人ずつが乗車していたのですが、男のほうはフロントガラスを破り即死してしまいます。
ジェームズは運転席に乗っていた女と目が合います。
するとその女が服に手をかけて、、、
ガバ!
急におっぱいを晒す女。
女が性的に興奮してしまっている事をあらわしているわけですが、唐突なおっぱいに度肝を抜かれました(笑)
この女性の名前はヘレンと言い、同乗していた男は彼女の夫でした。
つまり、100%過失のあるジェームズに目の前で夫を殺されたようなものなのですが、その状況にしてはあまりにも不自然な行動です。
お察しの通り、ヘレンは自動車事故に興奮してしまう性癖を持っている女性なのです。
おっぱいを晒したのはヘレンの興奮の表れですが、ジェームズを見つめているのは、ジェームズに自分と通じるものを感じ取ったからだと思われます。
そうです。
この事故でジェームズも同じ性癖に目覚めてしまうのです。
ここら辺の多くを語らない表現も上手いです。
お互いの不倫を認めている夫婦関係
ここで主人公ジェームズについてもう少し説明しておきます。
ジェームズにはキャサリンという美人の奥さんがいます。
しかしその夫婦関係は倦怠期を迎えており、お互いが別の異性とセックスする事を公認しているという間柄なのです。
これはジェームズの交通事故とは関係なく、元々の夫婦関係です。
お互い、既に普通の夫婦生活(夜の営み)では興奮できないようになってしまっているのです。
若い女と浮気をする夫
ジェームズの職業はCMのプロデューサーです。
映画でもさっそく職場のADさんと思われる女性と仕事中にセックスをしています。
これは前述した通り、妻のキャサリンも公認の行為です。
で、この時の不倫相手の日焼け跡が中々エロいんですよね(笑)
考えすぎかもしれませんが、普通のセックスに満足できなくなったキャサリンと対比させるように、健康的で若い女性の身体を映しているとも思いました。
夫以外の男に抱かれる女
片やキャサリンも他の男とセックスをしています。
キャサリンは小型の飛行機の免許を取ろうとしているようなのですが、その自家用飛行機の格納庫での不貞です。
尻を撫でまわされるキャサリン。
こちらがキャサリンの尻と腰ですが、悩ましい曲線美です。
キャサリンを演じているのは名女優のデボラ・カーラ・アンガーですが、彼女のスタイルの良さが映画の質を一段高めてますね。
また、キャサリン自身は自ら乳首を飛行機のボディに押し付けたりしています。
この行動も機械への畏敬の念というか、後述する<圧倒的な機械の力>に対するフェチズムの一端を表しているのだろうと読み取りました。
お互いの不倫を報告し合ってセックスする夫婦
ジェームズとキャサリンの夫婦はお互いに不倫をしていますが、愛がなくなっているわけではないんですよね。
実はお互いの不倫について報告し合い、それをオカズにセックスをするという関係なのです。
キャサリンは格納庫でのセックスを夫に報告しながら、尻を出して夫のチンコを受け入れます。
もう普通のセックスは興奮できなくなった男女が、生きる喜び(セックスの悦び)を取り戻そうと必死にあがいているのです。
この段階で中々10代、20代には理解しがたい世界かもしれませんが、誰しもが年齢を重ねるにつれ、二人の関係性が理解できるようになってくるのではないでしょうか。
しかし、、、
「イったのか?」
「いいえ」
「あなたのお相手はどうだったの?」
妻が不倫相手とのセックスでオーガズムに達したか確認するジェームズ。
しかし妻の答えはノーです。
つまり二人はスワッピングすら満足に興奮できない、次のレベルまできてしまっているのです。
手コキに現れる夫婦の愛情
現実の世界では倦怠期の夫婦というのは、お互いに愛情もなくなり、仲が悪くなったり、お互いを性の対象とみれなくなるケースが多いのかもしれません。
私の周りにもセックスレスの夫婦は多いです。
しかしジェームズとキャサリンは確かに愛情はあるのですよね。
それを強く感じたのが、ジェームズが交通事故のケガで入院している時のシーンです。
ジェームズのケガはかなり酷く、足にも仰々しい器具が取り付けられている状態です。
そんなジェームズをお見舞いにきたキャサリンが、、、
ヌルヌルヌル・・・
体を拭くための石鹸でヌルヌルにした右手を布団の中に突っ込み、手コキをしてあげるシーンがあるのです。
特にいやらしい空気とかがなく、唐突に夫の性処理をするところが、なんとも生々しかったですね。
手コキは一方的なご奉仕なわけで、冷え切った夫婦が病室でやる行為ではないでしょう。
同じ性癖をもった男女の燃えるようなセックス
さて、交通事故を起こした相手の女性・ヘレンとの関係について話を戻しましょう。
ヘレンから見るとジェームズは夫を殺した人間ですから、本来は憎むべき相手です。
確かに入院中に再会した時にはヘレンはジェームズに少々敵意を見せますが、それでも夫を殺した相手に向ける敵意としては中途半端な感じがし、映画を観ているほうも違和感を感じます。
そんな中、再びジェームズとヘレンが鉢合わせします。
それも事故を起こして損壊したお互いの自動車が保管されている場所で再会するのです。
普通、事故車を確認ってするもんでしょうか?
これだけ凄惨な事故であれば、思い出すのも嫌なのでは?
しかし、何故か二人とも事故車を見にくるのです。
ジェームズはヘレンを車で送っていく事になります。
実はまだケガは完全に治ってないのですが、それでも無理に自動車の運転を再開しているのですよね。
すると、、、
ヘレンを乗せたまま運転ミスを起こし、再び事故を起こしそうになります。
なんとかコントロールを取り戻して事故は回避するのですが、、、
「近くに空港の駐車場が・・・今なら空いているはずよ」
と、ヘレンがジェームズを駐車場へと誘導します。
駐車場に着いた二人は無言のまま、、、
チュパ!チュパ!チュパ!
いきなりセックスを始めるのです。
お互い、確信してしまった瞬間ですね。
何を確信したか。
それはお互いが交通事故に性的興奮を覚えるという、同じ性癖を持つもの同士であるという事です。
ここから野獣のようなセックスが始まります。
この時、勃起したかのようなヘレンの大きな乳首が映ります。
映画で、役者さんが演じているので、実際に興奮しているのかはわかりませんが、偶然の産物だとしてもこの乳首のインパクトはすごいです。
未亡人となったばかりなのに、自分の性癖を曝け出せる相手を見つけた女のサガみたいなものを感じさせる演出です。
運転席のジェームズに跨り、対面座位で激しく腰を振るヘレン。
興味深いのはその次のシーンです。
パっ!
シーンが切り替わるとジェームズとキャサリンがまったく同じく対面座位でセックスをしているのです。
この対比は面白いですね。
ストーリー的に空白を読み解くならば、おそらくジェームズがヘレンとのセックスをキャサリンに報告し、同じセックスを再現しようとしたという事なのでしょう。
ただ、ヘレンとの野獣のようなセックスに比べると、やや落ち着いた雰囲気のセックスである気がします。
ここのキャサリンの演技に注目してみます。
クイ・・・
クイ・・・
まるで本当に挿入してるかのように、いやらしく腰を前に突き出すキャサリン。
生々しい人間の交尾を感じさせるこの動きは下手なAVより遥かにエロいです。
性癖の深みへと誘いこむ危険な出会い
交通事故フェチに目覚めてしまったジェームズですが、ヘレンとの出会いはまだ入り口に過ぎません。
ここから更なる危険な出会いにもつながって行きます。
それが「クラッシュ・マニアの会」を主宰するヴォーンとの出会いです。
同じ性癖を持つ者同士のコミュニティー
「クラッシュ・マニアの会」とは、有名人が起こした死亡自動車事故などを実際に車で再現するショーなどを開催しているグループです。
ヘレンから紹介されて「クラッシュ・マニアの会」に接触したジェームズは、自分たち以外にも交通事故フェチの人間がいる事を知ります。
その中で、会を主催するヴォーンという男は非常に危険な人物です。
再現ショーだけでは飽き足らず、危険な運転を繰り返し、自動車事故がある度に現場の写真を撮影するマニア。
このヴォーンの存在がジェームズをさらに深みにハメると同時に、妻のキャサリンも徐々に巻き込まれていく事になるのです。
久しぶりにイク事ができた女
ヴォーンと初めて接触したキャサリンは、ヴォーンからあおり運転を受け、自動車のスリルを味わう事になります。
その晩のジェームズとの営みでは、キャサリンがヴォーンの事を妄想しながらセックスをします。
「彼に惹かれる?」
「彼のペニス見た?」
ヴォーンの事をジェームズに問いかけるキャサリン。
出てくるワードもどんどん過激になります。
「包皮はないの?」
「どんな肛門だと思う?」
どうやらキャサリンはジェームズとヴォーンのBL的な妄想をしているようです。
「彼とセックスしたい?」
「自分のペニスを彼のお尻の穴に入れたい?」
キャサリンの問いかけもどんどん卑猥になっていきます。
「どうやって彼のジーンズのチャックを降ろしペニスを取り出すの?」
「まずキス?すぐしゃぶる?」
「ペニスをしゃぶったことある?」
「精液がどんな味か知ってる?」
「人によってしょっぱさは違うの」
「ヴォーンのはすごくしょっぱいと思うわ」
この一連のセリフはかなりエロいですね。
特に後半のザーメンの味に言及している所なんかは最高です。
そういえば大人の女ってみんな精子の味知ってるんだろうなぁって再認識させてくれます。
BLには興味がわかないのですが、それに興奮する女性の姿はエロいですね。
十分に興奮が高まったキャサリンは、、、
「ハァ!ハァ!ハァ!」
「ウンっ!!」
ピン!!
急に腕を突っ張るように伸ばして、その後大人しくなります。
どうやらイってしまったようです。
しっかりとイク展開まで描いているという事は、監督もここに注目してほしいと考えているはずです。
ストーリーで言及はされてませんが、おそらくは久しぶりにオーガズムに達したという事を伝えたかったのではないでしょうか?
スワッピングなど色々試したけど満足できなかったのに、ここで初めて久々のセックスの悦びを感じることができたという事なのです。
尚、調べてみるとこの時二人がやってるのってアナルセックスなんですよ。
ボカシが入っていたのでちょっとわからなかったのですが。
つまりヴォーンとジェームズのアナルセックスを妄想しながらキャサリンもアナルでイったという事なんです。
かなり倒錯していますね。
人体損壊というエロス
さて、キャサリン、ヘレン、ヴォーンときて4人目のピースがいます。
それが「クラッシュ・マニアの会」のガブリエルという女性です。
交通事故で取り返しのつかない傷を負った女
ガブリエルも過去に自動車事故を起こしています。
彼女がヘレンやヴォーンと違うのは完全に取り返しのつかない損傷を負っている事です。
両足はつけ根からつま先まで足補助具で覆われ、杖をつき、上半身も何らかのプロテクターで覆っています。
一時的なケガではなく、一生歩行に障害が残るダメージを負った障がい者です。
こちらはベンツに突っ伏したガブリエルの下半身です。
映画のポスターやソフトのパッケージにも使われた有名なシーンですね。
両足が補助具で覆われている事はすぐ気づくと思いますが、良く見ると左腿にエグイ傷があるのがわかります。
私は初めてみた時はエロいケツにばかり目がいってしまって、まったく気づきませんでしたが(笑)
文字通り傷物となった女のエロス
で、ガブリエルとジェームズもカーセックスをするのですが、ここでガブリエルの傷にスポットをあてるような撮影をしています。
補助具付きのガブリエルの足は曲げられないので、伸ばした両足を抱え込むような体位でセックスをする事になります。
余談ですが、キャサリンに負けずエロいおっぱいをしています。
ここでガブリエルの傷がクローズアップされます。
ジェームズもこの傷に興奮を覚えている様子です。
この傷の形状は明らかにオマンコに似せていってますよね。
要するに交通事故の傷を女性器のメタファーとして使っているわけです。
ガブリエルの女性器そのものである足を抱きしめながら射精するジェームズ。
と、ここで、、、
パっ!
突然CMの撮影現場へとシーンが切り替わります。
そしてそこにはダメージジーンズを穿いて肌を露にした、かつての不倫相手である撮影スタッフが映ります。
ヘレンとキャサリンの対面座位のシーンでも使われてましたが、こういう対比がこの映画の面白いところですね。
ここで言うと本当のダメージを負っている人体損壊のエロスと、ダメージジーンズという偽りのエロスを比較しているのでしょう。
この不倫相手の女性の後にはうつろな表情をしたジェームズが映ります。
要するにジェームズはもうかつての不倫相手には興奮を覚えてないという表現なわけです。
ジェームズは交通事故フェチに完全にハマり、スワッピングにすら何の興奮も覚えなくなってしまったという事なんですよね。
取り返しのつかない人体損壊とは交通事故の瞬間を写真のように切り取って保存したものとも言えます。
つまり交通事故・自動車事故フェチは人体損壊フェチ、障がい者フェチにも至るものなのかもしれません。
ちなみにガブリエルはヘレンとも事故車の中でセックスをしています。
もー登場人物みんなヤリまくりです。
機械の力に蹂躙されるというエロスについて考察
ここで、交通事故・自動車事故フェチについて考えてみたいと思います。
今回の記事を書く上で、色んな方の考察・レビューブログを読んでみましたが、多くの方が交通事故に性的興奮を覚えるのは理解できないという感想を持っているようでした。
果たして交通事故・自動車事故フェチとは特殊性癖なのでしょうか?
ヴォーンのセリフから得られるヒント
映画の中でヴォーンが語るセリフにヒントがあります。
「自動車事故は破壊的ではなく生産的出来事だ」
「性的エネルギーの解放なんだ」
「事故で強烈な死に方をした人間の性的エネルギーを感じ」
「自分自身もそれを経験するということ」
「それが俺の本当のテーマだ」
私も完全には理解できませんし、良くわからない部分も多いですが「事故で強烈な死に方をした人間の性的エネルギー」という言葉でピンときてしまった部分があります。
「エロス」と「死」と「機械の圧倒的な力」
当ブログではホラー映画で描かれるエロスについて語る事が多いです。
それは私が「エロス」と「死」が表裏一体で、密接にかかわっていると考えているからです。
「エロス」とは生きる活力を得る行為であるとともに、新しい生命を生み出すこともできます。
その正反対に位置するのが「死」です。
とりわけホラー映画では生を謳歌する登場人物達に理不尽な死が迫ります。
死を意識する事によって、より生 = 性 = エロスのすばらしさが際立つのです。
そして日常生活で理不尽な死を意識させるものがあります。
それは人類の英知である機械という代物が発する圧倒的な力です。
ヴォーンの「事故で強烈な死に方をした人間」という言葉にピンときたのはそこです。
自動車事故ではどんな強靭な肉体を持った人間も圧倒的なパワーによって引き裂かれ、あがく事のできない死が訪れます。
つまり彼らは自動車事故という強烈な死から、エロスのエッセンスとしての理不尽な死を感じ取っている人たちなのだと理解しました。
電マフェチという性癖
ちょっと映画とずれてしまいますが、私はこんな風にも考えました。
私は電マフェチでして、電マオナニーや電マ責めプレイに強い興奮を覚えます。
これは人間の手マンとかピストン運動では与えられない強烈な快感を女性に与えるという側面に興奮しています。
つまりデリケートゾーンである女性のオマンコが機械の雑なパワーで蹂躙される事に興奮を覚えるのです。
ですので、実はローターにはそこまで興奮しません。
電マの無骨なスタイル、、、まさに機械といった風体と振動に意味があるからです。
まあ、間違った解釈かもしれませんが、自動車事故フェチのもう少しポップなものとして電マフェチも通じる所があるのではないかと思った次第です。
そう考えると、私も自動車事故の圧倒的な力で蹂躙される事のエロスを徐々に理解できるようになってきました。
このように要素を分解していけば、交通事故・自動車事故フェチも、あなたの性癖にどこかで通じている部分が見つかるかもしれません。
実は映画「クラッシュ」は、特殊な性癖について描いているのではなく、普遍的なエロス(かなり深い所にあるエロス)について描いているのだというのが私の解釈です。
ちなみに映画内ではダミー人形を使った自動車の衝突実験ビデオを見て興奮するヘレンが描かれています。
理解をしようとしなければ、完全に頭がイカレタ女のシーンですが、、、
このヘレンの目には、電マ責めAVのように映っていたのかと思うと、なんとなく理解できてくるのです。
ネタバレ注意!終盤2か所の謎について考察
さて、ここからは終盤の展開(一つは結末)に関わる内容となってきますのでネタバレ注意です。
個人的にはネタバレしていたとしても楽しめる映画であると思ってはいるのですが、やはり未見で知りたくないという方はこの項は読み飛ばしてください。
映画「クラッシュ」は多くを説明しない演出となっているので、登場人物の行動やセリフに様々な解釈が生まれる作りとなっています。
終盤で特に解釈が難しいシーンがありましたので、そちらの考察をしてみたいと思います。
キャサリンの涙の謎
終盤でとうとうキャサリンはヴォーンとセックスをする事になります。
それもジェームズの運転している車の中でです。
たまたま遭遇した交通事故現場からの帰り道、ついにキャサリンも交通事故・自動車事故フェチに目覚めたことを自覚してしまったのです。
後部座席で突然おっぱいをヴォーンに見せつけるキャサリン。
格納庫での不倫の時も乳首を飛行機にこすりつけてましたし、ジェームズと正面衝突をしたヘレンもおっぱいを出してました。
このおっぱいを出すという行為は女性の興奮を表しているようです。
ちなみにキャサリンのおっぱい、相変わらずエロいです。
そしてそのまま、ヴォーンとセックスをするのですが、、、
シーンが切り替わって、今度はジェームズと裸でベッドインしています。
その時、キャサリンの体にたくさんの痣ができてるんですよね。
映画内ではちゃんと描かれてませんが、これは先ほどのセックスの時にヴォーンにつけられた痣なのだと思われます。
夫とは違う激しいセックスで、乱暴な男の乱暴なセックスで傷をつけられたということですね。
で、キャサリンの表情に注目してみると・・・涙を浮かべてるんですよね。
この涙の意味についてはまったく触れられてないのですが、一体どういう理由で泣いてしまっているのでしょう。
当然、体の痛み、、、ではありませんよね。
普通に考えたら、乱暴な男に雑に扱われた事による涙、、、とも解釈できるかと思います。
しかし、私は全く違うと考えます。
これは交通事故・自動車事故フェチに目覚めて引き返せなくなったことを悟った涙なのではないでしょうか。
おそらくキャサリンはヴォーンとの乱暴なセックスにも激しく興奮してしまったのだと思います。
そして実際の交通事故を目の当たりにして興奮してしまった自分も自覚しています。
再び生きる喜び(セックスの悦び)を取り戻すためにスワッピングもしていたキャサリンですが、行き着くところまで行ってしまった事にショックを受けているだと思われます。
つまり、ジェームズ同様、もはやスワッピングでも興奮しない、罪な体になってしまった事へのショックです。
ジェームズの最後のセリフの謎
映画のラストではジェームズがキャサリンの運転する車にワザと追突して事故を起こさせてます。
交通事故・自動車事故フェチになってしまった妻の為のプレイというのは明らかですね。
この後に最後のセリフがあるのですが、、、その前の部分にも注目です。
道を外れて横転したキャサリンに駆け寄るジェームズですが、、、
ジェームズの関心は車から這い出たキャサリンより先に事故って大破した車本体に行ってるんですよね。
まずは事故の規模を確認していたとも解釈できますが、普通であれば妻のキャサリンの安否を先に確認するものではないでしょうか。
つまりここでも救われない性癖で自動車事故に興奮を覚えているジェームズの様子が表現されているわけです。
そしてキャサリンに声をかけるジェームズ。
「キャサリン・・・大丈夫か?」
「ジェームズ・・・分からない」
「ケガを?」
「たぶん平気よ」
「平気だと思うわ」
平気という言葉を二回繰り返すキャサリン。
それに対してジェームズは、、、
「この次はきっと・・・」
「この次はきっと・・・」
とやはり二回繰り返して語り掛け、身動きが取れなくなっているキャサリンとセックスをし始めて映画の幕が下ります。
ではこの最後のセリフの「きっと」の続きにはどんな言葉が秘められていたのでしょうか?
実は思い返してみると、似たセリフが映画の最初のほうに登場しています。
それはジェームズとキャサリンがお互いの不倫を報告し合ってベランダでセックスしたシーンです。
「イったのか?」
「いいえ」
「あなたのお相手はどうだったの?」
「途中で呼ばれてセットに戻ったんだ」
「かわいそうに」
「でも次があるわ」
「次はきっと・・・」
その時にはキャサリンのセリフでしたが「次はきっと・・・」と言ってるんですよ。
最後のセリフの意味も、あの時のやり取りを参考にすれば、少し浮かび上がってきます。
不倫報告シーンではお互い満足のいく不倫ができなかったことに対して「次はきっとよい不倫セックスができる」という意味なのは明らかですね。
では最後のシーンではキャサリンの「平気」に対して「次はきっと」と言っています。
平気というのは、大したケガじゃなかった、取り返しのつかない事態にはなっていないという意味ですが、それじゃダメだった、目的を達してないということなんですよね。
そうなると、おそらくはキャサリンをガブリエルと同じく障がい者にする事が目的だったのではないかと解釈できます。
つまり「この次はきっと・・・」の後には「障がい者にしてあげるよ」と繋がるのだと思われます。
ネットではキャサリンを死亡させることを目的にしていると解釈する方もいたのですが、私的にはそうではないと思うのですよね。
まず、ジェームズがキャサリンにケガの有無を確認してますし、何より傷つけ合ってはいますが、お互いを必要としているからです。
たとえキャサリンが自分が死ぬことにしか興奮できない体になっていたとしても、夫を愛するキャサリンがジェームズを置いていくことはないと思われます。
いずれにせよ、自動車事故で障がい者になる事でしか満足感を得られないとは、本当に救いがない性癖です。
しかし、前述した通り死とエロスの関係は普遍的なものです。
誰しもがジェームズとキャサリンのようになってしまう危険性を壁一枚向こう側に持っているのではないでしょうか?
出演女優の紹介
最後になりますが、本作で体を張った演技を見せてくれた女優さんたちに触れたいと思います。
デボラ・カーラ・アンガー
キャサリン役のデボラ・カーラ・アンガーは90年代から活躍している名女優さんですね。
個人的にはデビット・フィンチャー監督の映画「ゲーム」で主人公と一緒に謎のゲームに巻き込まれるヒロイン役の印象が強いです。
本当にセクシーな体をお持ちで、本作でも惜しげもなく披露していました。
また、かなり卑猥な演技にも体当たりで挑んでいましたね。
ホリー・ハンター
ヘレン役のホリー・ハンターはデボラ・カーラ・アンガーよりも1世代上で、映画当時で38歳だったようです。
こちらも熟女としての生々しい女像を演じきってます。
病んでる感は強めでしたね。
ロザンナ・アークエット
身体障がい者のガブリエルを演じたのはロザンナ・アークエットという女優さんです。
あまり存じていませんでしたが、調べてみると私の大好きな映画「バッファロー’66」(ヴィンセント・ギャロ)にて、主人公が高校時代に片想いしていた嫌味な女役で出演されていました。
お奇麗な方ですが、ジェームズとのカーセックスではケモノのような顔を見せてます。
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか?
途中でも書いたとおり、本記事を書くにあたって、他の方の考察ブログや映画サイトでの口コミなども沢山読ませていただきました。
中にはストーリーもなく、ただ変態たちのセックスを見せられてるだけの映画と評している方もいましたが、そうとは思いません。
多くを説明しない演出なので、登場人物の行動やセリフから行間や裏を読み取る必要があるため、難解になってしまっているのかもしれません。
ただ、その分考察しながら楽しめる映画でもあります。
ぜひ本編を見ていただきたい名作です。
予告編がYouTubeにありましたので、そちらも貼っておきます。
ただ、こちらの予告編数年前に劇場公開された4K版のようです。
現在配信されているバージョンも内容としては大差ないと思います。
映画の予告編
今回紹介した作品が配信されている動画サービス紹介
本記事で紹介した映画がU-NEXTで見れるか確認してみました。
2024年10月20日に確認した所、U-NEXTで配信中(見放題対象作品)でしたので、興味がある方はU-NEXTで視聴するのがオススメです。
クラッシュ
見放題対象作品
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また、配信していても見放題対象作品でなかったら、別途ポイントが必要なので注意が必要です。
なので、U-NEXT加入前に必ず現在も配信中かどうか、見放題対象かどうかリンク先ページで「クラッシュ」で検索して確認してください。
作品が検索で見つかれば現在も配信しています。
作品名の下の記載が「見放題」となっていれば月額料金だけで無料で見れて、金額が記載されていればその分のポイントが別途必要になります。
本ページの情報は2024年10月時点のものです。
最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。